月の光にさそわれて
ぼくらは街にくりだした

人っ子一人いない夜の小町通りは
まるでぼくら二人だけのためにあるように
じっと息をひそめてる
きみはパラノイア気味のダンサーみたいに
満月の光を浴びてスキップする

真っ赤な唇を小指でなぞり
長い髪は返り血を浴びたよう
そっと触れると
邪険にぼくの手をはらいのける
怖れおののくヴァンパイアみたいに
きっ、とぼくをにらみつける
ほら小さな牙まで見えるよ

そんなとき
きみはきっとJulietteの夢のなかで
密かな楽しみにふけっているんだ
きみの陰鬱に美しい身体が
悦びにふるえているもの

きみはいつかきっと
笑った月のもとで
ぼくの首をしめるに違いない
そんなたわいもない空想を弄んでいると
きみはふとぼくを振り返り
にっこりわらった